元官僚が教える「事業再構築補助金」の計画書作成のコツ5選~第6回事業再構築補助金申請締め切り直前SP~
皆さまこんにちは。
ビジネス支援行政書士 ライズ法務事務所の米山です。
当事務所では補助金申請サポートなどを主業務としております。
先週、6月8日(水)に第6回事業再構築補助金の公募受付が開始され、その翌日である6月9(木)に第5回公募分の採択結果が公表されました。
当事務所においても認定支援機関と連携して申請支援をしたクライアントが見事に採択され、また1つ嬉しい経験が増える結果となりました。
当事務所では第3回公募から申請支援をさせていただいており、これで第3回から第5回まで連続で採択実績を有するという結果を得ることが出来ております。
更に言えば、下記の時事通信社の記事は財務省が中小企業庁に対して「飲食店の採択が少なくない?」と苦言を呈している記事なのですが、その採択数の少ない飲食事業で、かつ、採択率が3割台と最も低い「通常枠」という『二段階ハードル』においても採択実績を有しております。
では申請が通らない計画書と当事務所が作成する計画書の差は何なのでしょうか。
当事務所は一体どの辺りに気を付けて資料を作成しているのでしょうか。
今回は、「事業再構築補助金」の計画書作成のコツ5選と題して、なんと当事務所がどのような視点で資料を作成しているのかを紹介したいと思います。
申請を考えている事業者、事業者の申請支援を行う士業者、双方ともに有益な内容になっていると思います。
それではいきましょう
目次
1.強調すべきは地域貢献度よりも自らが儲かる計画であること
突然ですが、事業再構築補助金を担当している省庁はどこかご存知でしょうか。
答えは、中小企業庁(経済産業省)になります。
え? そんなの関係ある? 国の補助金はどれも一緒でしょ?
と思われたでしょうか。
実は「事業再構築補助金は中小企業庁が管轄」であることを意識することは非常に大切なポイントになります。
中小企業庁のホームページには「中小企業庁の任務」という民間企業で言うところの『企業理念』が書かれており、次のように書かれています。
中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させる
出典:中小企業庁のホームページ「中小企業庁の任務」より引用
ものすごく簡単に言えば、『中小企業の皆さまにもっと儲けてもらいたい』ということを企業理念にしているということです。
実は事業再構築補助金のご相談を受けると、結構、以下のお話をお客様からいただきます。
- この新規事業をやれば地域が活性化するんです!(行政にも貢献する内容なのだから採択確率が高いと思うんです)
- この取り組みはSDGsに資する取り組みなんです!(国も推し進めている内容なのだから採択確率が高いと思うんです)
おそらく「相手は行政」ということを強く意識するあまり、商売っ気よりも地域貢献度を押し出そうとされているのではないかと思われますが、事業再構築補助金について言えば『逆』になります。
なぜなら、儲けて欲しいという理念を持っている中小企業庁が管轄している補助金だからです。
そうは言っても、中小企業庁も国の組織の1つ。最近の流れのSDGsよりも自分が儲かる計画の方が良いなんてあるのでしょうか。
そこで、公表されている採択結果のエクセルをダウンロードして「事業計画の概要」欄に対していくつかのキーワードで検索をかけてみました。
「SDGs」で検索をかけた結果はこのようになりました。
これだけ見ても多いのか少ないのかよく分からないので、それでは次に、飲食店のうちの1つの形態である「カフェ」で検索をかけてみましょう。
結果はこうなりました。
「カフェ」の方が2倍以上採択件数が多いという結果になりました。
では、地域活性化はどうでしょうか。
やはり「カフェ」の方が採択件数が多いという結果になりました。
ちなみに、この結果はキーワード検索のみの結果であって、概要に書かれている内容を1件1件精査するということまではしていません。
そのため、ひょっとしたら新規事業の内容が「カフェ」ではなく「もうカフェなんて二度とやらない!」というネガティブな内容が含まれている可能性もございます。
また、各キーワードでの申請件数そのものは分からないため、すなわち、採択率は不明です。
それらを加味しても、1事業形態だけで2倍以上の検索結果というのは無視できない結果と言えるのではないでしょうか。
なお、冒頭に記載した通り、飲食店での事業再構築は財務省から中小企業庁に対して「飲食店の採択が少なくない?」と苦言が呈されている分野です。
財務省によると、コロナ禍で売り上げの落ち込みが特に大きく、業態転換のニーズが高いとみられる飲食・宿泊業が採択された割合は4分の1程度にとどまる。同省は「真に必要な事業者に適切な支援が行き渡るような見直しが必要だ」と主張した。
出典:時事通信「「事業再構築補助金」見直しへ=中小企業の依存懸念―財務省」より引用
そんな飲食店分野の中の1つの形態よりも更に少ない「SDGs」や「地域活性化」。
『地域貢献度よりも自らが儲かる計画であることを強調する』
これを意識するだけでだいぶ違う結果が得られることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
なお、儲ける事業の組み立て方・考え方については、「ドリルを売るには穴を売れ(佐藤 義典 著)」という本が、10年以上も前に出版された本ながらストーリー仕立てで面白く読め、かつ、非常に参考になるかなと思いますので紹介させていただきます。
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2.SWOT分析のうち、弱み・脅威は新規事業で解消出来る内容にする
当事務所では『以前に他社さんの協力のもと申請したけど不採択となってしまった』案件について「リトライしたい」というご相談も承っております。
その際に計画書を拝見させていただくと、弱みや脅威の欄に「津波浸水地域に立地していることが弱み」、「首都直下地震が来ることが脅威」という記述を目にすることがしばしばあります。
確かに大災害は脅威かもしれませんが、かと言って事業再構築補助金でどうにかするという話ではありません。
「弱みや脅威を何でも良いから書く」、「ネガティブなことはあまり書きたくない」というマインドは当事務所ではオススメしません。
少なくとも、新規事業と無関係な内容は避けた方がいいと思います。
では当事務所では弱み・脅威はどのように書くべきと考えているのでしょうか。
当事務所では、新規事業で解消出来る内容とするべきと考えております。
解消出来る弱みや脅威としては、例えば、『既存事業では顧客層に偏りがある』、『売上額に月(季節)の偏りがある』などが考えられます。
これら偏り(リスク)を新規事業で解消する、というストーリーを組み立てていきます。
なお、先ほど大災害はコントロール出来ないので記載するには不向きである旨記載しましたが、では、最近の国外情勢による材料の高騰はどうでしょうか。
材料費高騰も確かにコントロールするのは難しそうです。
しかし、新規事業の内容によっては記載出来る可能性があります。
例えば「既存事業店と新規事業店で共通する材料を洗い出し・管理することで、廃棄ロスの削減や仕入品をまとめて仕入れることによるコストメリットが図られ、競合店よりも価格優位性を出す」とすれば、逆にアピールポイントへ繋げることが可能になります。
※競合店が価格高騰で苦しい(ネガティブ)、わが社は価格優位性を出せる(ポジティブ)、となるので、すごく大きな差が付くアピールポイントとなります。
このように、ピンチをチャンスに変えられる可能性がありますので、弱み・脅威についてはよく検討して、解消出来る内容を設定する必要があります。
3.既存事業の強みは客観的な評価を用いる
事業再構築補助金における計画書作成の中で、『強み』は非常に重要な要素の1つになります。
なぜなら、1.の『儲かる計画であること』も、2.の『弱み・脅威の解消』も、強みをベースにして組み立てていくからです。
そのため、お客様に「ご自身の強みはなんですか」という質問を必ずさせていただくのですが、この質問に対してはスラスラとお答えいただけても、次に「ではなぜそれを強みだと言えるのでしょうか」という質問をすると答えが詰まってしまう、というお客様は少なくありません。
そうなんです。
『強み』というやや抽象的なものを言語化するのは実は難しいのです。
しかし、上記の通り『強み』については新規事業の根幹ともなる重要な要素ですので、ここを曖昧にしたのでは計画書全体が曖昧となり、すなわち、審査員から「不採択」という判断をされてしまう可能性が高まります。
そこで必要となるのが『客観的な評価』となります。
客観的な評価とは、食べログやホットペッパー、GoogleMapなどによる口コミ評価が分かりやすい例になります。
ただ、既存事業の業態によってはこれら口コミが得られる環境が無い場合も考えられます。
このような場合は、「お客様からこんな声をもらっている」等のエピソードをいくつか計画書に載せることになります。
これらを書くことで、自身の思い込みで強みがあると言っているのではないこと、曖昧ではないことを計画書内で説明できることになります。
加えて、自身が気付いてないだけで別の部分に強みがあったことに気付いた、という新たな発見が起きることもあります。
なお、2.と3.でSWOT分析に関する内容が続いていますが、この『SWOTにそれぞれ何を入れて、どのようにストーリー立てていくのか』といった辺りがまさに我々、申請支援を行う士業者の腕の見せ所だったりするわけです。
ですが、じゃあ「完全にお任せ」でいいかと言うと、そのような心の持ちようはあまりオススメしません。
最終的にはプロに任せることになるにせよ、申請者自身もある程度は知っておいた方がいいと考えております。
そのため、「SWOT分析による戦国武将の成功と失敗(森岡 健司 著)」という本が、戦国武将になぞらえた説明になっていて読みやすいかなと思いますので紹介させていただきます。
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4.自立性のある計画であること
事業再構築補助金の計画書の書き方を解説しているサイトはいくつかありますが、自立性について書いているサイトは見かけませんのでこちらを4つ目として記載いたします。
補助金を受けて新規事業を実施するわけですが、数年後に事業運営が危うくなる・数年後にまた新規事業が必要となって補助金に頼る(また税金投入)ということでは国(行政)としても困りますので、事業が継続的に続くのかどうか(成長していくのかどうか)も行政としては大切なポイントになります。
※ここはまさに、行政がどの辺をポイントにしているのかを知っているが故の当事務所独自の強みになります。
この「数年後も事業運営が安泰で補助金に頼らずに済む内容の計画書」というのは1.の『儲かる計画』と少し似ていますが、ただ、考慮すべきは金銭面だけではありません。
新規事業を立ち上げ、軌道に乗せ、更に事業を拡大するために人を雇い、体制を整え、事業を成長させていく
といった、業務体制面も含めた一連の流れを計画書に記載していくことになります。
例えば、どのようなスキルを持った方を何人雇うのか、年収どれくらい払う予定なのか、いつ雇う予定なのか、といったことを設定して記載していきます。
そして、人を雇うということは人件費が発生しますので(支出が増えますので)、増えた支出を踏まえた上でなお『儲かる計画』にする必要があります。
金銭面や体制面などを含めて『成長していく計画』とすることで、行政に頼らない自立性のある計画になるわけです。
5.よくコミュニケーションを取る
これまでの1.~4.までをご覧いただくと分かるかと思いますが、士業者の机の上だけで作る計画書にはどうしても限界があります。
より良い計画書を作るためには、相談者は自身の強みを活かした新規事業を練り、そして士業者は相談者の考えを言語化して計画書を作りこんでいく、といった二人三脚での作業が必要となります。
そのためには、当然、相談者と士業者がよくコミュニケーションを取る必要があります。
いま現在顧問契約を結んでいる士業者さんとはよくコミュニケーションを取れていますでしょうか。
任せっきりにしてはいないでしょうか。
士業者さんはクライアントへインタビュー出来ていますでしょうか。
様式にはめ込む対応となっていないでしょうか。
相談者から全委任されて数日間で計画書を作り上げるというのも確かにすごいスキルですが、多少素早さが落ちても相談者とよくコミュニケーションを取って強みや想いなどを引き出した上で計画書を練り上げる、ということも負けず劣らず有能スキルだと考えております。
相談者・士業者、双方がこの記事をご覧いただいて素晴らしい計画書が増え、補助金採択者が増えてくれれば幸いです。
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今回は以上になります。
ご相談やご不明点などございましたら当事務所までご連絡ください。
※補正予算が成立し、各種支援制度が動き始めるため、当事務所の業務状況次第ではお受け出来ない事態となることも考えられます。ご興味がありましたらお早めにご一報ください。
皆さまの持続的な事業運営を願っております。
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