官僚的視点から再構築補助金の結果を考察してみた~再構築補助金の第4回採択結果の話~
皆さまこんにちは。
ビジネス支援行政書士 ライズ法務事務所の米山です。
当事務所では補助金申請サポートなどを主業務としております。
前回記事からずいぶんと間を空けてしまいました。
記事を更新することは事務所が営業していることのお知らせでもあるので更新は切らすまいと思っていたのですが、ありがたいことに、事業復活支援金の事前確認や事業再構築補助金のご相談などを多数いただき、全力投球をしていた結果、更新が出来ずにおりました。
ようやく波が少し落ち着きましたので、これからまたちょくちょく記事を書いていこうと思っております。
皆さま引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
さて、今月の上旬、3月3日(木)に事業再構築補助金の第4回公募分の採択結果が公表されました。
19,673者の応募に対して8,810者の採択。
すなわち、採択率は44.8%ということで、これまでと大きな変化は無かった結果となっております。
※以前に書いた「事業再構築補助金の難易度について考察」に前回までの採択率を書いております。
https://bizrise-office.com/column_2022_0209/
ただ、「これまでと大きな変化は無かった結果」だけで終わらせたのではなんとも味気ないので、今回は官僚的視点をもって事業再構築補助金の採択結果を考えてみようと思います。
第6回から変更点があるとアナウンスされている事業再構築補助金。従来制度では現在公募中の第5回が最後となり、その第5回への申請期限が3月24日(木)までとなっております。
今回の記事が参考になれば幸いです。
それではいきましょう
目次
1.どの省庁の補助金なのかはとっても大事
霞が関で長年働いていたため染み付いてしまい、あまり気にしていなかったのですが、退職し、多くの方とお話をさせていただいたことで気が付いたことがあります。
それは、多くの方が『国の補助金という括りで認識されていてどの省庁の補助金なのかまでは気にしていない』という点です。
どの省庁の補助金なのかってそんなに大事なの?
はい、とっても大事です。
そして、この「どの省庁の補助金なのかに着目する」というのが官僚的視点(今回の記事のポイント)になります。
説明いたします。
各省庁が支援制度を創設する際に、財務省という国の勘定奉行さまに
「この支援制度を実施するために●●億円が必要なので予算措置してください。」
というお願いをします。
その際に財務省から
「でも似たような支援制度が●●省にあるよね? こんなにお金かける必要ないよね?」
という返しが飛んできます。
そこで、
「いえ、我々は●●の人たち向けに、●●になってもらうための支援制度なのです。あの省庁の支援制度とは違うものなんです!」
という説明をします。
このようにして「誰にどうなってもらいたい補助金なのか」が決まります。
すなわち、そこから外れてしまった内容の申請は、採択審査の際にポイントが付きづらいということになります。
2.事業再構築補助金の担当省庁は中小企業庁
事業再構築補助金のご相談の際に、お客様から以下のお話をいただく機会がちょくちょくございます。
- この新規事業をやれば地域が活性化するんです!
- この取り組みはSDGsに資する取り組みなんです!
などです。
お客様から「最近の国の流れに沿っているし、いけるでしょ!」という自信と熱い想いをお話から感じます。
実際、お話を聞かせていただき、「最近の情勢を掴みよく考えられた大変素晴らしい案だな、すごいな」という感想を抱くことが多いです。
しかし、事業再構築補助金でそのコンセプトを前面に押し出すのはあまりオススメいたしません。
理由は、
事業再構築補助金の担当省庁が中小企業庁(経済産業省の組織の1つ)だからです。
中小企業庁のホームページに「中小企業庁の任務」が書かれており、次のように書かれています。
中小企業を育成し、及び発展させ、且つ、その経営を向上させる
出典:中小企業庁のホームページ「中小企業庁の任務」より引用
ものすごく簡単に言えば、『中小企業の皆さまにもっと儲けてもらいたい』ということを経営理念にしている団体ということです。
ですので、事業再構築補助金で前面に押し出すべきは、地域活性化でもSDGsでもなく、いかに申請者自身が儲かる計画であるか、ということになります。
すなわち、上述の「誰にどうなってもらいたい補助金なのか」に当てはめると、社会問題を解決してもらいたい補助金ではなく、『中小企業に儲けてもらいたい補助金』ということになります。
3.採択された事業計画の概要をキーワード検索してみると
そうは言っても、中小企業庁も国の組織の1つ。最近の流れのSDGsよりも自分が儲かる計画の方がいいなんてあるのでしょうか。
公表されている採択結果のエクセルをダウンロードし、「事業計画の概要」欄に対していくつかのキーワードで検索をかけてみました。
「SDGs」で検索をかけた結果はこのようになりました。
これだけ見ても多いのか少ないのかよく分からないですので、それでは次に、飲食店のうちの1つの形態である「焼肉」で検索をかけてみましょう。
結果はこうなりました。
「焼肉」の方が採択件数が多いという結果になりました。
では、地域活性化はどうでしょうか。
第4回分では「地域活性化」の採択件数の方が多くなっていますが、それ以外は「焼肉」の方が多い結果となっています。
ちなみに、この結果はキーワード検索のみの結果であって、概要に書かれている内容を1件1件精査するということまではしていません。
そのため、焼肉で事業再構築という内容ではなく「もう焼肉店なんて二度とやらない!」という内容も含まれている可能性があることを添えておきます。
また、各キーワードでの申請件数そのものは分からないため、すなわち、採択率も不明です。
あくまで、件数でみれば、という内容になります。
4.飲食店の採択件数は多い? 少ない?
ここ最近のトレンドである「SDGs」や、言葉の定義がかなり広い「地域活性化」と、飲食店のうちの1つの形態である「焼肉」とを比べて、「焼肉」の方が採択件数が多いということが分かりました。
ちなみに、飲食店は採択されている方なのかと言うと、実は財務省から中小企業庁に対して以下のような注文が入っております。
財務省によると、コロナ禍で売り上げの落ち込みが特に大きく、業態転換のニーズが高いとみられる飲食・宿泊業が採択された割合は4分の1程度にとどまる。同省は「真に必要な事業者に適切な支援が行き渡るような見直しが必要だ」と主張した。
出典:時事通信「「事業再構築補助金」見直しへ=中小企業の依存懸念―財務省」より引用
簡単に言えば、財務省が中小企業庁に対して「飲食店の採択が少なくない?」と言っているわけです。
そんな飲食店分野の中の1つの形態よりも、更に少ない「SDGs」や「地域活性化」。
もちろん、採択されていないわけではないですし、上述の通り採択率そのものは分からないので「絶対やめるべき」とまでは言いませんが、データから見る限りでは「SDGs」や「地域活性化」押しでいくのはオススメいたしません。
5.再構築計画のアイデアが思い浮かばない場合は
「補助金が欲しいんだけど何やればいい?」というご質問は基本的には補助金の趣旨に合致しないので、そのような順番で考えることは本来はよろしくないのですが、あくまで1つの例として言うのであれば「デジタル」をキーワードに考えるのはアリかもしれません。
ちなみに「デジタル」でキーワード検索をかけた結果はこうなりました。
6.まとめ
それでは今回のまとめです。
- 申請しようと思っている補助金がどの省庁の補助金なのかは大切。それによって前面に押し出す内容が変わる。
- 事業再構築補助金の担当省庁は中小企業庁である。
- 中小企業庁のミッションは『中小企業を儲けさせること』
- すなわち、事業再構築補助金は『中小企業に儲けてもらいたい補助金』ということ
- よって、事業再構築補助金では、SDGsなどの社会問題よりも、自身が儲かる計画であることを主張する内容で組み立てていくことをオススメ
今回は以上になります。
ご相談やご不明点などございましたら当事務所までご連絡ください。
※新年度の各種支援制度が動き始めてきているため、当事務所の業務状況次第ではお受け出来ない事態となることも考えられます。ご興味がありましたらお早めにご一報ください。
皆さまの持続的な事業運営を願っております。
それではまた